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第75話 蓮

 何が辛いって、今目の前にいる主任がものすごい笑顔で、こっちをじっと見ていること。緊張してあまり食事の味がしないし、どうしたらいいのか分からない。  主任は目の前に広がる夜景を見る事もなくずっとこっちを見ている。  「本日のデザートでございます」  チョコレートソースとクランベリーソースでイラストの描かれた皿にシャーベットと、チョコレートケーキみないなものが乗っている。  「美味しそう、これならいくらでも食べられるかも」  そう言うと、主任がにっこりと笑った。  「俺の分もどうぞ、食べていいよ」  「本当ですか?主任のお皿に乗っている、緑色のムースも気になっていたんです!」  「で、俺はこのデザートより、欲しいデザートあるんだけど?お返しにくれる?」  「はい?」  甘くないのがいいのかな?和菓子とかそういう事かな?  「少しだけ席を外すよ、ゆっくり食べていて」  主任は静かに席を立って出て行った、どこに行ったのだろう。  デザート1人で二皿も食べるのもどうかなと思うけど、まあ好きだし幸せだからいいかと思っていたら、主任が戻ってきた。  「待たせたかな、もう十分に満足した?」  デザートの皿も綺麗に平らげてしまった、もう十分。縦にも横にも何も入らないと思う。  「はい。あの任、実は今日は持ち合わせがあまり」  「今日は全部俺のおごりだよ、初デートくらい持たせてもらおうかなと思うけれど」  え?……デート?  今日の食事って、デート?だったんだと驚いた。

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