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第77話 蓮
寝不足で足元は少しおぼつかない。美味しい食事でお腹いっぱい。好きだと正直に伝えられ気持ちもいっぱい。
もう今日はこのまま帰って朝までぐっすりと眠ろうと思っていた。
なのに何故か今、主任と二人でホテルの部屋にいる。好きだと認識しても、今まで男性と付き合った経験がない。と言うより、女性と付き合ってのだって数える程。
この状況にどうしていいのか解らず動けない。どうするのが正しいのか。主任は当たり前のように鞄を置きジャケットをクローゼットにかけるとネクタイを外す。
「お前いつまで入り口に立っているつもり?こっちおいで。それとも、俺が脱がせてやろうか?」
「いえ、結構です。自分でできます」
えっと、脱ぐってどこまで脱ぐんだろう。
……俺の思考回路は今おかしい。主任が言ってたのはジャケットの事だ。
ジャケットとネクタイをクローゼットのハンガーにかける。振り返ると主任が手をひらひらさせて、こっちへ来いと言っている。
「後は俺でいい?」
「俺でいい?」何がいいと聞かれたのだろう、と考えていたら伸びてきた手がシャツのボタンを外し始めた。
「え?主任?」
「俺が脱がせて良いかって確認したろ?」
主任の言っていたことは、そう言うことなのかと、半分パニックになる。器用に主任の手はボタンを外していく。
シャツはするりと肩から床へと落ちた。唖然として主任を見ると、主任と目が合った。
「ああ、忘れていた。まずはここから」
主任の両手で、耳を包み込まれた。一瞬だけ静寂の世界に入ると、そのまま主任の唇が俺のそれと重なった。
最初は優しく触れるようにそして角度を変えて深く口付ける。
「ん、」呼吸するタイミングを失う。
主任の手が髪の中に潜っていって頭を抱え込まれる。気持ちいい。どうしよう。俺、主任の事が泣きたいくらい好きみたいだ。
金属が触れる音がしていつの間にかベルトが外れていた、ふわりとウエストが軽くなる。足元にスーツのパンツが落ちてきた。
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