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第82話 匠
上原の身体から力が抜け、意識が飛んだようだ。「好きです」と涙目になりながらふっと落ちてしまった。
俺は意識のない上原の中で果てた。
明日はきっとこいつ動けないな、金曜日で良かったと時計を見る。すでに日付は変わっていた。
俺は盛りのついた高校生かと可笑しくなった。
上原の汗をかいた体を軽く拭いてやると、横に滑り込むんだ。しっかりと腕の中に抱き込んだ。直接触れる人の肌は気持ち良い。満たされる。
そして、波に揺られ漂うように夢の中に落ちていった。
明け方腕の中で、もぞもぞと何かが動いていた。目を開けると上原と目が合った。おはようと、額にくちづけた。
「お、おはようございます」
上原がこちらを見て上擦った声で答えた、そして次の瞬間に赤くなった。
「主任、すみません。起こさないようにしようと思ったんですが、喉が渇いてしまって」
「ちょっと待ってて」
起き上がるとバスローブを引っ掛けて、冷蔵庫からペットボトル出して手渡す。
「多分、起き上がれないから」
言われている意味がわからないと言った顔をした上原が体を起こした時、顔をしかめた。
「い、いたっ」
噴き出してしまった俺を見て、上原はもうこれ以上赤くなれないくらいに赤面した。
自分の腰をさすりながら、少し涙目になっている。
「ちょっと昨日、無理させ過ぎたよな。動けるか?朝飯は部屋で食べようか」
黙って真っ赤なまま下を向いている。もう、どうしてやろう。こいつが可愛くてしかたない。
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