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第115話 蓮

 従兄弟の結婚式は大きな式場の広い庭園を使ったガーデンパーティーだった。  本当に素敵だった、幸せそうなカップルがたくさんそこにはいた。  俺のパートナー役は従兄弟の小学生の妹だと知った主任は大笑いしながら「浮気するなよ」と冗談言ってたけれど。  小学生のその子は結局パーティでは、親に引き取られて他の席に移動した。まあ、それで落ち着いて一人で周囲を見回す時間があったのだけれど。  いつの日か堂々と匠さんをみんなに紹介したいと、願いながら周りの幸せそうな人たちを見ていた。その時、突然後ろから声をかけられた。  「あの、すません。上原蓮さんですよね?初めまして、水野さやと申します。お兄様の秘書をさせていただいております」  「あ、兄がいつもお世話になっております」  何で兄さんの秘書がここに?  「少しだけお話し良いですか?」  そう言われて無下に断る事もできない。  「ええ、もちろん。どうぞ」  隣の空いている椅子を勧める、と言っても兄さんの秘書と何の話をすれば良いんだろう?  「兄は会社ではどうですか?結構、頭固いから大変ですよね」  そう言って舌を出すと、すこし驚いた表情をした水野さんがクスクスと笑った。  「ん?何か俺変ですか?兄よりは、とっつきやすいと思うんだけれどなあ」  「いえ、いつもお話を伺っていた蓮さんとは印象があまりにも違っていて」  今「蓮さん」って言われたけど、そんなに親しくは無いからね。  「どう言われてるの?気になるな」  これは本音。  「とても頑固で、誰の言う事もきかないやつだとおっしゃっていたので。随分と柔らかい印象なのですこし驚いただけです。あ、この話はここだけの内緒にしておいてくださいね」  確かに俺は言い出したら聞かないとこはある。  少しだけ世間話をした、水野さんは「失礼いたしました」と戻っていった。

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