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第117話 蓮
式の後、なぜか兄さんの秘書を自宅まで送り届ける役目を言いつけられた。水野さんと言うその女性はずっとにこにことしていた。
タクシーで帰るのなら俺がいてもいなくても同じだろうとは、口が裂けても言えない。
「わざわざありがとうございます、今度またお会いできると良いですね」
「そうですね、ではまた」
社交辞令で笑顔で返してから、慌ててタクシーに戻り、主任のマンションの住所を伝た。主任に約束したから、誕生日のうちに必ず帰ると。
マンションに着くと真っ暗で誰もいない。
食事に出かけたのかなと部屋を見回す。甘いものはあまり好きではないのはしっているけれどあ、バースディケーキは別。
数字のロウソクを真ん中に立ててテーブルに置く。
もう一つの包みをとなりに置いて準備は完了した。
これで完了ではあるのだけれど、主任との約束はもう一つある。
うーん、エプロンって。どれが良いかわからなくてお店の人に可愛いのをとお願いした。
「あら?彼女へのプレゼントですか?」
ピンクのフリルのやつを勧められた。
勢いで買ったはいいものの、自分の姿を鏡で見てどうしようもなくなる。これはいたたまれない。
エプロンは裸につけるものじゃない絶対に。給食当番以来の初エプロンが、これってどうなの。恥ずかしくてどうにかなりそう。
思わず見たくなくて電気を消した。
玄関でお迎えしなくちゃと、そろそろと壁伝いに玄関に向かっていた時に扉がかちゃりと開いた。
嬉しくて自分の格好も忘れて飛びついてしまった。
裸なの?と、聞かれて自分の格好を思い出して暗闇の中で真っ赤になってしまった。
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