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第124話 匠

 少しアルコールが入っていたせいか、自分がしつこかったのかと心配になる。上原は軽く痙攣しながら果て、そのまま一緒に俺も連れて行かれた。次の瞬間には意識を失った上原がぐったりと隣で眠っている。  服を着せたくて、脱力した身体が動かない。タオルで軽く体を拭いてやり、そっと布団をかけてやる。そのあと、水を飲みにキッチンへと移動した。  テーブルの上にはケーキが寂しそうに乗ってた。  「蓮が起きるまで待ってて」  え?俺、今何をしたんだ。ケーキに声をかけるなんて、もう末期だなと思った。そのケーキは冷蔵庫へと移動していただいた。  年内に何等かの答えを出せと、言っていたお兄さんの言葉が気になる。あれ以来何もアクションを起こしてきていない、そろそろ何かが起きると心配しているのに。  ペットボトルを1本持って寝室へ戻る。幸せそうに寝ている上原を見て温かいものが込み上げてくる。   サイドテーブルに水のボトルを置くとベッドに滑り込む。上原の頭を持ち上げて腕を下に入れる肩のところに引き寄せる。上原は俺の腕の中にぴったりとはまるサイズなのだ。  身体がきれいに合わさる、するりと上原の腕が腰に回ってくる。ああ、無意識なのだろうけれど、このままじゃ寝ている上原相手に第二回戦へとなだれ込みそうだ。 結婚式の後で疲れている上原を、意識が飛ぶまで無理をさせた。今は目がさめるまでそっとしておこう。  おやすみと髪に小さなキスを落として目を閉じた。

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