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第127話 蓮

 主任からクリスマスプレゼントに高そうな腕時計をもらった。今まで腕時計をつける習慣がなかったからすごく新鮮だ。  正直、携帯があれば腕時計要はらないと思っていたけれど、実際つけてみると意外に便利。何よりも主任が俺のために選んでくれたかと思うと、見るたびに嬉しくなる。  「よっ上原、時計見て何ニヤニヤしてんの?」  総務の木下に声をかけられた。年末の忙しい時に何をしに来たんだか。  「お前、自分のデスクに帰れよ。今日は仕事納めだろ」  「俺はもう終わったから、飲み会待ち。で?その時計はどうしたのかな?」  「クリスマスにもらったんだよ」  つい自慢したくなる。と言うより、みんなに言いふらしたいのが本音。  「ええっ?お前もしかして、例の彼女と上手く行っているのか」  木下は俺に好きな女性がいると信じてる。好きな人がいるとは言ったけどその人が女性とは一言も言っていないのだけれどね。  まあ、普通好きな人と言えばそうなるよね。  「上原、おしゃべりしてないで今月の売り上げ報告を早く出せ。お前、年末会社に出て仕事したいのか?」  あれ、もしかして主任がやきもちを妬いてくれているのだろうか?声に少しだけとげがある、だとしたら嬉しいのだけれど。  主任は会社では厳しい。けれど、いつも的確で主任のそういうところに愛を感じる。あれ?俺って叱られて喜ぶタイプだったのかな。不安になってしまう。  主任に言われた書類をまとめるために、急いでパソコンを立ち上げた。

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