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第131話 蓮
兄さんは誰にも何も言っていないようだ。帰って来てからずっと母親は上機嫌。いつもの年末の風景だ、主任の事が伝わっていたらと緊張していただけにほっとした。
「母さん、この前の話だけど」
兄さんが突然口火を切った。
「蓮、あのね。まだちょっとお母さんは早いと思うのだけれど、どうしてもって先方もおっしゃるし」
「え?母さん、何の事?先方って?」
「この前のあなたのお見合いの事なのだけれど」
「お見合いって、いつ?誰がお見合いしたの?俺?」
もう何の話だかわからない。
「水野さん、お前の事気に入ったらしいぞ」
横から兄さんが挟んでくる。
……水野?どこかで聞いた事あるような、ないような。
「ああっ!兄さんの秘書の」
「お見合い結婚は当然だろう、お前の結婚はちゃんと考えてある。相手が直接お前に会いたがったから会わせただけだよ」
父親がわけのわからない事を言い出した、俺の結婚は俺が決めるから。
「母さん俺、付き合っている人いるからそのお見合いは断っておいて。で、みんなの顔見たからもういいや、その人のところに帰る。あ、そうだ詳細は兄さんが知ってるから。じゃあね。父さん、おじいちゃんもまたね」
「蓮!待ちなさい!」
母さんごめんね、でも俺は兄さんとは違うから。
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