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第132話 匠
年末独りで、年越し蕎麦くらいなら食べるかと。他には何もいらないと買い物さえしなかったけれど、予定外の甘いデザートが先にやってきた感じだ。
除夜の鐘をBGMにそのまま寝室に雪崩れ込んだ。このまま二、三日会えないと思っていた俺の寂しさはマックスになっていたのに、上原はすぐに帰ってきたという感覚らしく温度差があったが説明してもわかってはもらえないだろう。
最初、上原は俺の飢餓状態に戸惑っていたけれど、何度か繰り返し口づけると呼吸が荒くなり、気がつくと俺の方が押し倒されて上に乗りかかられていた。
「匠さん、何だか今日すごく余裕が無いみたいですね、どうかしたのですか?」
そう言っている目が、まんざらでもないと訴えていて煽ってくる。手がシャツの中に入ってくる。横に手を滑らせるように身体を撫でる。
上原がかけていた眼鏡をベッドサイドに置いた。こいつの目は本当に色をはらんだ時は直接俺の腰にくる。ぞぞぞと、脇から背骨を伝い届いた感覚に脳が考えるのを中断したようだ、まるで獣のようにただ感覚だけに溺れようとしている。
「蓮、どうした?」
いつも主導を俺に取らせる上原が積極的に動く。すっとスエットの下をずらす。つけっぱなしのリビングのテレビから「あけましておめでとうございます。」と聞こえてくる。上原は可愛らしくにこりと笑う。
「匠さん、新しい年もよろしくお願いします」
「蓮、ありがとう。俺こそよろしく」
ものすごい格好でのベッドの上での挨拶。そう思っていたら同じ事を上原も思ったらしい。
「んー?こんな格好じゃなくて、本当はきちんと挨拶したいのですけれど、何故か待てそうにないです」
それだけ言うと、上原は俺の脚の間に頭を深くうずめた。
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