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第133話 蓮
新しい年を主任と二人で迎えた、たったそれだけの事。けれど、年の最初に会えるのが一番愛しい人だと言うのは素敵な事だと思う。裸で体の中心を合わせるようにして抱き合ったまま動けない。
そろそろ眠らなきゃとも思うけれど、発散したはずの体の熱は互いに見つめあってるだけでまた戻ってくる。
こうやって一緒に過ごす時間が増えれば、増えるほど愛しさが募ると言うのはどういうことななのだろう。
主任は俺を見つめていて、髪を優しく撫でていてくれる。
「蓮は本当に俺の腕の中に収まりのいいサイズだな」
そう嬉しそうに笑う。男にしては華奢な体つきが嫌だったけれど、そう言われると自分の体型さえこの人に会うためだったのかと思ってしまう。
主任をじっと見つめていたらお腹がなった。そういや昨日の夜は何も食べてないと思いだした。
「お雑煮でも作ってやるよ、待ってろ」
いつものように頭をぽんと軽く叩くと、主任がゆっくりと立ち上がった。眼鏡を探して携帯を確認する。何通か新年のメッセージが携帯に入っていた。
それと数回の着信履歴だ、すっかり実家に爆弾を落としてきた事忘れてた。
「やっぱり、あれはまずかったかなあ」
携帯の画面を見ながら呟くと主任がどうしたのという顔をこちらに向けている。
「あの、昨日、なぜか結婚の話が出て。好きな人いますって宣言してきてしまったんですけれど」
「え?結婚って?」
「ですよね、驚きますよね。俺だって結婚なんて考えたこともありませんでしたから」
「蓮、お前まだ二十三だよね」
「うちは祖父が地元で小さい会社やってて。お得意さんのお嬢さんが同じ年齢で、将来嫁にもらう約束だったと。親同士の戯言だと思ってましたし、相手にも会った事はなかったのですけど。まさか本当にそんなつもりだったなんて」
「お前の地元って?」
「俺は生まれたのは東京ですけど、もともと父親も千葉なんです。」
お正月からこんな話をして主任の機嫌が悪くなるのは嫌だけど嘘をつくのも嫌。兄さんがあの後みんなになんて話したのかが本当に気になる。
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