135 / 336
第135話 蓮
新年早々こんなのは嫌だ。動けない、肩を上から押さえつけられて起き上げれない。主任が怒ってる。何故怒っているのかもわからず軽くパニックになった。
「ご、ごめんなさい」
「蓮、なぜ謝るんだ。何か俺に言ってない事あるのか?」
こんなのは主任じゃない。初めて怖いと思う、無理押さえつけられ服をひき剥がされそう位になる。自分の襟元をぐっと握りしめて、抵抗する。
「こんなのは嫌です!」
身体を捩ると抜け出し、引き戻そうとする主任を力任せに突き飛ばしてしまった。主任が苦しそうな顔をしている、傷ついている。女性と一緒だった事を言わなかったから?それだけのことで、どうしてこんなにも?
「匠さん、何も隠していません。本当です」
痛みを共有したようで苦しい、何でこんなに苦しいのだろうか。
「蓮、ごめん。解ってる、でもどうしようもないんだ」
今度は急に抱きしめられた、強くしっかりと。
「蓮、どうしよう。お前の事が大切なのに、傷つけてもそばに置きたい。放したくない、閉じ込めておきたい」
「匠さん、大丈夫です。傷ついたりしませんから。一緒にいてくれたら、俺はそれだけで幸せなんです」
背中をゆっくりと撫でられた。目の前には主任の泣きそうな笑顔。主任の目の中に映る自分の顔もきっと同じ顔だと思う。
一瞬見つめ合って、それからゆっくりと柔らかな口付け。溶けそうに甘い時間。主任の一挙一動に嬉しくなったり、苦しくなったりする。
「蓮、他に何もいらない。お前だけでいい、だから」
主任の言葉一つに、その優しい口づけ一つに、泣きそうになったり嬉しくなったり。おかしくなってしまったのかもしれない。
ともだちにシェアしよう!