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第135話 蓮

  新年早々こんなのは嫌だ。動けない、肩を上から押さえつけられて起き上げれない。主任が怒ってる。何故怒っているのかもわからず軽くパニックになった。  「ご、ごめんなさい」  「蓮、なぜ謝るんだ。何か俺に言ってない事あるのか?」  こんなのは主任じゃない。初めて怖いと思う、無理押さえつけられ服をひき剥がされそう位になる。自分の襟元をぐっと握りしめて、抵抗する。  「こんなのは嫌です!」  身体を捩ると抜け出し、引き戻そうとする主任を力任せに突き飛ばしてしまった。主任が苦しそうな顔をしている、傷ついている。女性と一緒だった事を言わなかったから?それだけのことで、どうしてこんなにも?  「匠さん、何も隠していません。本当です」  痛みを共有したようで苦しい、何でこんなに苦しいのだろうか。  「蓮、ごめん。解ってる、でもどうしようもないんだ」  今度は急に抱きしめられた、強くしっかりと。  「蓮、どうしよう。お前の事が大切なのに、傷つけてもそばに置きたい。放したくない、閉じ込めておきたい」  「匠さん、大丈夫です。傷ついたりしませんから。一緒にいてくれたら、俺はそれだけで幸せなんです」  背中をゆっくりと撫でられた。目の前には主任の泣きそうな笑顔。主任の目の中に映る自分の顔もきっと同じ顔だと思う。  一瞬見つめ合って、それからゆっくりと柔らかな口付け。溶けそうに甘い時間。主任の一挙一動に嬉しくなったり、苦しくなったりする。  「蓮、他に何もいらない。お前だけでいい、だから」  主任の言葉一つに、その優しい口づけ一つに、泣きそうになったり嬉しくなったり。おかしくなってしまったのかもしれない。

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