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第141話 蓮
「匠さん?もう眠ってしまったのですか?」
背中を向けて眠ってしまった主任にそっと手を伸ばす。昨日まであんなに幸せだと思っていたのに。なぜか今日は遠い。
大丈夫。すぐにここに戻ってこいよと言ってほしくて。主任の腕の中で眠りたくて手を伸ばす。主任に抱かれることで、何らかの証しになるとは思わない。けれど、この不安を払拭して欲しい。いつもなら腕の中で髪を優しく梳きながら眠らせてくれるのに、振り向いてももらえない。
自分があまりにも浅ましく思えてくる。きっと主任は酔って寝てしまったのだろうか、それとももう……。
眠れない。家に帰るだけ、別に会えなくなるわけじゃないと自分に言い聞かる。主任にコンタクト取ってきたのは兄さんなのだろうか?何も教えてもらえないと言う事実が悲しい。
そっと背中に手を重ねた、振り向いてもらえない主任の背中に身体を寄せてすがるように頬を寄せる。
「匠さん、好きです、好きなんです」
言葉じゃ足りない伝えきれない。手を振り払われるのが怖くて腕を回す事もできず、背中に触れた手から伝わる体温を感じていた。
次はいつ会えるのだろうか?明日会社から自分の家に帰ったら、そしたら会社で会う以外会えないのだろうか?荷物は送ると言われた、それは取りに来る事も許されないという事のなだろうか。聞きたいけど、怖くてきけない。
こんなに俺って臆病だったっのか、こんなに情けない恋愛をしているのか?
みっともないって解っていてもどうして良いのか解らない。
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