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第149話 蓮

 「会議室で盛るなよ」と昼休みにからかうようなメールが来たけれど、主任の方が盛ってたから絶対ね。でも気持ちよかったからよしとしよう。  山中さんに「具合でも悪いの?朝から変ね」と、言われたけれど朝から主任のおかげで絶好調。  明日には父さんが帰ってくるからもう一度話しをしなくちゃいけない。その前に今日はどこに帰れば良いんだろう。今朝はシリアルの箱がでんとダイニングテーブルの上で自己主張していた。兄さんは普通、自分たちの部屋の方で朝食を済ませてから出社するし、おじいちゃんは帰ったようだだ。これじゃあ、広い家に移って一人暮らししているのと同じ状況。主任との生活の方が落ち着いている。  誰もいないリビングに向かって「行ってきます」と声をかけた。  母さんは昔から頑固だからなあと思ったが、自分の頑固さも母親に負けず劣らず。確実に母親譲りだとおかしくなった。  仕事中は主任の座っている左側がずっと暖かくて、主任がそこにいるというだけで、空気まで暖かく感じるなんてどれだけ単純なんだと思う。  「お先に失礼します」  ずっと一緒に居られるのは会社にいる間だけ。けれど終業時間は来るし、帰らなきゃいけない。パソコンの画面を落として立ち上がる。  「ああ、お疲れ」  主任が微笑んでくれた、それだけで泣きそうになるくらい嬉しい。今日帰ったら母さんと二人きりだ。兄さんは来ないだろう、と言うより奥さん連れて今来られても困るのは俺の方。  せめて母さんが、口聞いてくれたら話も出来るけれど、あれじゃあ取り付く島もない。  「ただいま」  想像していた通りだ、母さんは家にいるんだかいないんだか。電気もついていない、ダイニングのテーブルの上には「ピザでもとりなさい」と付箋が貼られている。はぁとため息が出た、思っていたより大変そうなこの先の事に頭が痛くなった。

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