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第151話 蓮

 「蓮、そこまでにしておこうか」  冷静に主任にそう言われて笑ってしまった。確かに今日会社で盛ってたのも俺かもしれない。まだ駄目だと言う主任の言葉は多分俺を思いやっての事。理解しているつもりだけれど。  「ごめんなさい、匠さん。食事しましょう」  手を繋いで、玄関からリビングへと移動する。  「ん?カレーの匂いがする」  俺が準備して待っていると言えば「カレー」でしょう。という事でカレーソースのピザ。 サラダとスープはコンビニで準備したし、いまどき料理が出来なくても生きていけるようになっているんだ。  食事をしている間はただ主任の視線が気になって仕方ない。じっと見つめられて落ち着かなくなる。小さい時から食事はきちんと落ち着いてと育てられた。だから違った熱を向けられると食事が喉を通らなくなる。  「匠さん、あの……あまり見ないで下さい」  「ああ、悪い。飯食べたら送っていくよ、それまでは見てようと思って。さすがに今日家に帰せないのは問題だからね」  やっぱりしないのか、そんな気はしていたけれどね。残念……けれども主任の顔が見れたから良しとしなきゃね。  「明日、父さんが帰ってくるから話をもう一度聞いてもらいますね。その後は、どうなるのか俺自身わかりません」  「大丈夫。待っているから、蓮」  いつものように頭を軽く撫でられる、それだけで安心する。  「はい」  主任は待っていてくれる、だから強くならなきゃいけない。

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