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第153話 蓮

 「母さん、今の人が」  話しかけた途端「知りません」と怒ったような返事が聞こえた、黙々と前だけを向いて歩いていく。本当に頑固だよこの人はと思いながら、俺もそうかと少しおかしくなる。  「ねえ、俺ってやっぱり母さん似だよね」  「似ていません」  母さんは相変わらず取り付く島もない。ああ、俺の母親らしいんだろうな。  「俺さ、理解してもらえるように努力はするけれど、どうしても理解してもらえないなら。その時は諦めるしかないよね。多分、家族より匠さんを選ぶよ」  「あなた、自分が何言ってるかわかってるの?」  「うん、絶対に譲れないって事」  「いつもそう。親の心配を他所に、あなたはいつも」  盛大にため息をつかれた。なんかすごく疲れているみたいで申し訳なく思った。  そのまま母さんは家に入ると、真っ直ぐに自分の部屋へと行ってしまった。疲れた顔をしていたけれど、母さんはきちんと食事をしてるのかと心配になる。  何かできるかなと思うけれど、特に何も出来そうもない。けれど、カレーなら作れると、冷蔵庫をのぞくと材料がある。飲み物を探す以外で家の冷蔵庫見たことなかったなと思う。  この前やった通りと思い出しながら、作る。米を研いで炊いておく。  終わった時には既に夜中の一時を回っていた、キッチンにはカレーの良い匂いがしている。  静かに台所のドアが開いた。  「蓮?あなた何してるの?」  驚いた顔の母さんにカレーの鍋を指差してみせる。  「いや、ご飯食べてないんじゃないかなって。これ、明日でも食べて。ご飯炊いてあるからお茶漬けでも食べない?俺も付き合うからさ」  「料理なんて、いつからするようになったの?それに人の心配まで出来るように、あなたも少しずつ成長しているのね」  何故か母さんは涙ぐんでいた。

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