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第156話 匠

 食事も和やかに終わろうかという頃に、温度差で曇った窓から外を見ると、ちらちらと白いものが舞っているのが見えた。  上原が窓を開けて楽しそうに外を見る。「結構積もってるよ」と大声で騒ぐ。犬は喜び庭駆け回りって、本当なだなと、ふとおかしくなる。本当にこいつは可愛い、優しい気持ちが溢れてくる。    ニュースで、突然の雪に交通機関の乱れがというテロップが、流れている。  「今日は泊まっていきなさい。少し酒でも付き合ってもらおうかな?田上君は何を飲むのかな」  上原のお父さんに声をかけられた。  「特にこだわりはありません」  「蓮、お前は先に風呂にでも入ってこい。私は少し田上君に付き合ってもらうよ」  上原も追いやられ、いつの間にか、三々五々人がいなくなり二人きりで向かい合って座ることになった。妙な緊張感が走る。  「では、聞かせていただきましょうか?あなたは蓮とはどう言うご関係でしょうか?」  今までの穏やかな声の調子が、平坦になり、厳しい目をしてこちらを真っすぐに見ている。上原の目は父親譲りなのだと不謹慎な事を考えていた。  「真剣にお付き合いさせていただいております。」  一呼吸おいて、正直に答えた。ここまで来たからには嘘は要らない。  「真剣に、ねえ?まだ世間知らずのひよっ子捕まえて、どう言う了見なのかお聞かせ願いたいものだ」  「れ、蓮さんからは、何とお聞きになっていますか?」  「私は何も聞いてはいませんよ。ただ、これでも経営者、人を見る目はあります。先ほどから、あなたのあの子に向ける目は上司のそれではない」  「隠しているつもりはありませんし、いい加減な気持ちではありませんから」  「いい加減な気持ちでは困ります。しかし、真剣と言われても困ります。さて、どうしましょうか」  ばたんと大きな音がして、上原が飛び込んできた。  「俺、匠さんと付き合ってるから。認めないなら出て行くし。みんなこそこそして俺を仲間外れにしてもダメだからね。当事者は俺!」  いきなり噛みつくように大きな声を出した上原に驚いてしまった。

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