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第157話 蓮
「お前は風呂に入ってこい」ってなぜいつも俺が追い出されるのか気になる。
つい、やってはいけないとは分かっていても廊下で聞き耳を立ててしまう。
父親の口調が厳しい、主任がまるで悪人みたいに扱われるのは納得できない。飛び込んだら主任が驚いて、そして次に困った顔をした。
「蓮、まったくお前ってやつは」
父さんが呆れた顔をしている。どうやら俺は最悪のタイミングとやらで飛び込むのは天才的に上手いらしい。
「でも、俺は父さんにきちんと話して認めてもらおうと、そう言っても母さんと兄さんに止められるし。勝手に父さんは匠さんと話をし始めるし」
「美智子も勇も知ってるのか?まさか、親父も知ってるって事はないよな?」
呆れた顔をした父さんの顔と、驚いた顔の主任の顔とを交互に見る。
「おじいちゃん?知ってるよ、もちろん」
父さんは大きくため息をつくと「またか」と小声で言った。
「留学の時も、一人暮らしの時もそうだ。みんなが先に話をして、最後に俺にすべてを持ってくる。勝手に話をして最後の下駄だけこっちに預けるのは勘弁してくれ」
それって?どういう事?もしかして、母さんも兄さんも賛成してくれているってことなの。
「もういい、十分だ。とりあえずは、第一関門は抜けたらしいな田上君」
ん?なんだかあっけない方向へ話が流れ出している。
「勘違いするんじゃないぞ蓮、俺は歓迎していない。とりあえず静観するという事だ、それからお前が自宅へ戻ること。独り暮らしは認めない、これは最低条件だ。少し冷静になるんだな、馬鹿馬鹿しい俺は寝る」
主任は少し、困ったような顔を俺に向けるた。
「少しでも認めてもらえるように頑張ります」と父さんに誓っていた。
主任、俺は全く納得していません。
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