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第161話 蓮
明るい寝室の中で、誰かと一緒にいるのに服を着てない。そんなこと、以前の俺なら考えられなかった。でも主任の腕の中にいると、生まれたままの姿、それが一番自然な事のような気がする。
「蓮、今日は俺が余裕ない」
いつも俺より冷静でリードしてくれている主任にそう言われてぞくぞくとした感覚が肌の奥から表面へと上がってくる。
主任の身体の稜線をゆっくりと辿るように舌を滑らせていくと、「くっ」とくぐもった声がした。
その声に自分の身体も反応する。ここ何日間かの苛立ちも、寂しさも全部帳消しにしてくれる。
「お前、いつの間にこんな悪戯を覚えたの?」
主任は、ふっと笑う。その笑顔につられて笑った。
「片付けは俺がするから、もう手加減とか期待しないで。」
主任の艶っぽい声がお腹奥の方をと引っぐっと奥へ張ったような気がして「はあっ」と声が漏れた。
その声が掛け声のようになりベッドの上に転がされた。ようやく暖まってきた寝室の空気が肌を撫でていく。
髪に耳に鼻先にくちびるにと口づけの雨が降ってきた。
閉じた瞼にも。
「匠さんのキス、好きです」
伝えたその瞬間に左脚を掴まれつま先を口に含まれた。それから膝の裏に口づけられる。もっと欲しいと願う身体が大きく震える。
「ここ、感じるんだね」
そう言われて恥ずかしくて右腕で顔を覆う。
「隠さないで、顔を見せて」
腕をベッドに押さえつけられて、そこに縫いとめるように口づけられると、全身の力が抜ける。そして五感すべてが、快感だけを追っていく。海のような感覚に溺れてしまう。きっとそのうち呼吸もできなくなる、そんな気がした。
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