173 / 336

第173話 蓮

 通夜、葬儀と、まるでレールに乗っているように次々とやってきて、淡々と時間が過ぎていく。日曜日の通夜の席では、まともに座る事ができず主任に支えてやっと座っていた。  月曜日の葬儀は、主任はいないと思っていたけれど、俺を置いていけないと、会社を休んでくれた。  後から思い出しても、葬儀の記憶が半分以上ない、なぜか高熱を出してしまい呼吸することさえつらかった。  そんな俺に主任は何も言わず、ずっとついていてくれた。  人がばらばらと帰り、家族だけになり静かになった時、母さんが旅行鞄とともに俺を主任に預けた。  「この子をしばらくお願いします、田上さん」  「「え!?」」  主任と同時に声が出た。     「しばらくは義父の様子もみたいですし、かといって連も心配ですし。会社でも見ていて下さるのですよね。食事もさせてください、お願いします」  「はい、しばらくお預かりします。大丈夫です、しっかり食事もさせますから」  「お願いします」と母は言って頭を下げた。一番驚いたのは俺だった。  ……そして今なぜか主任のマンションで、膝に乗せられて風呂に入っている。  「あの…匠さん?結構これは恥ずかしいんですが」  「ん?お母さんと約束したからね、倒れるかもしれないから降ろせない」  この問答はこれで二回目だ、さっきも降ろしてくださいとお願いして却下された。  「痩せたね、蓮。少しうまいもの食わせたいが、今日はもう俺も疲れた。後で簡単なもの作ってやるからな」  身体中を確認するように優しくさすりながら、主任が話しかけてくれる。安心する。やっぱり俺が困った時に現れる、主任って俺のヒーローなんだと思う。  主任のその手が気持ちよくて肩に頭を預けると目を閉じた。  「匠さん……あの…当たってます」  「ああ、仕方ない。この状況じゃ。俺だって男だし、ここんとこ蓮不足だったからね。大丈夫。今日はしないから、そこまでデリカシーのないやつじゃないから」  そうか、しないのか…って。何か眠れそうにないな、

ともだちにシェアしよう!