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第186話 匠
家に着く頃にメールが来た。
『いろいろあって一週間は、実家から通います。ごめんなさい』と書いてあった。
「俺とそいつと、どっちか大事だよ」とは、口が裂けても言えないが、一ミリも納得もできない。紺野と付き合ってた頃は浮気されても、何日か帰ってこなくても受け入れられた。
それなのに上原が他の男の世話を焼くと思っただけでむかむかする、頭が痛い。返信しなきゃいけないよな。そう思ってため息が出てきた。今日、何回目だろう。
直接電話で話したいが、実家にいると思うとかけづらい。そう思っていたら携帯が鳴った。
『匠さん?今、電話しても大丈夫ですか?』
「ああ、どうした蓮?」
『あの、後でいろいろと分かるの嫌ですよね。ですから先に言っておきます。ザック、家で引き取る事になって、母さんが勝手に決めてしまって。それで慣れるまでの一週間俺が朝学校に送っていく事になりました』
その時後ろから嫌なセリフが聞こえた。
「蓮、どう言う事。部屋をシェアしてるって?」
聞こえてきたザックの意地の悪い言葉に腹が立った。
『えっ?あ、あの俺の部屋をザックに使ってもらうって事だけだですから』
「で、お前。今日はどこで寝るの?」
『えっと……もちろん同じベッドじゃないですよ?』
当たり前だ、冗談じゃない。
「今から迎えに行く。明日の朝早くに車で送ってやるから帰ってこい」と、言いたかった……それを無理やり飲み込んだ。
「蓮、できれば……客間で寝てくれ……」
情けないセリフを吐いてしまった。
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