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第187話 連

 電話を切るといつの間にか後ろに立っていたザックを睨んだ。誰もいない庭にわざわざ出て話していたのに。  「なんで余計な事言うんだよ!」  「蓮がこそこそと俺を置いて出て行くの見えたから、相手はあの男でしょう?」  主任に言われる前から、もともと客間で眠るつもりだったのにザックが余計なことを……。  ………あ、あれ?何か変じゃないか?うん、おかしい。  「ザック、日本語かなり解るでしょう?」  「え?何の事?」  涼しそうな顔で答えるザックに、もう一度問いかけた。  「さっきの匠さんとの会話の内容がわかってるようなタイミングで挟んできたし、母さんの言ったこと半分しか伝えてないのに、何故俺が同じ部屋を使うと思ったの?」  「あ、え?だ、だって……あの部屋は蓮のものでしょう?」  「そうだ思い返してみると、最初からちょっと違和感あったかも。挨拶さえ日本語使おうとしなかったし。英語で話す事に固執してるみたいで」  「……いや。あの、少しなら。解るかもしれない」  もともと賢い子だった。ある程度?違うかなり理解しているはず。  「ザック、正直に言って」  じっと目を見ると、肩をすくめて仕方ないと言うように頭を振った。  「解る」  急にしょんぼりとする姿を見て仕方ないかと諦めた。悪気があったわけじゃないだろう。英語で通せばいつも俺が傍にいてくれると思ったのだろう。  「やっぱりね。とりあえず明日は学校までは送るよ。けれど、明後日からは自分で出来るね」  「……ハイ」  主任に明日の夜は帰れそうですとメールする。そうしたらすぐに返信がきた。「無理するなよ」と言われるのかなと思っていた。  けれど『できれば今日にでも帰ってきて欲しい』と書いてあった。嬉しくて電話をそっと頬につけた。主任の気持ちが冷たい画面から伝わってくるような気がしていた。

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