192 / 336
第192話 匠
身体にまとわりつくような部屋の濃い空気は上原の熱を伝えてくる。余裕などないと言っていたのはこいつの方なのに、実際は俺の方がもうぎりぎりまで追い詰められている。
「蓮、手をここに入れてくれる?そう、いい子だ」
膝裏に上原の手を導いて押さえさせた。後ろから抱きしめてやった方が上原は楽かもしれないが、この姿勢だと顔がよく見えるのだ。
開いた口から漏れてくる吐息が、早くと誘っている。これ以上、引き摺られないようにしっかりとその口を塞いだ。
迎えに来た上原の舌に絡め取られ、もう観念した。やっぱり俺はこいつに踊らされている。
一つになる、深く繋がる。まるでもともと一つの身体であったかのような錯覚に陥る。ゆっくりと深く身体を沈み込ませれば、さらに奥へと誘われる。
「蓮、気持ちいい?どうして欲しい?」
質問には答えずに、ぐっと首を掴まれ引き寄せられた。小刻みに震えながら、何度も口づけてくる。上原が喘ぐたびに奥がぐぐとうねりながら絡みついてくる。
「匠さん、すき、す…きです」
泣くような途切れ途切れの声で俺の名前を呼びながら身体を反り返らせる。そして上原と俺の身体の間で上原が達した。
そのうねり引っ張られる。何とか波をやり過ごそうとしても、より大きな波にのまれる。
すでに呼吸を捕まえようと必死に浅い呼吸を繰り返す上原の最奥で俺も果てた。脱力した上原の中で幸せを感じる。何時間でもこうしていたい。けれど、まだ週の始めだと言う冷静な自分がブレーキをかける。
柔らかい髪の間を指で梳くと「んん」と、気持ち良さそうな顔をする。
大きくゆっくり息を吐く。こいつの顔を見ているだけでこんなにも満たされる。この可愛い恋人を抱きしめて明日の朝までゆっくりと眠ろうと、腕の中にしっかりと囲い直した。
このまま時が止まってもいいと思えるほどの幸せの中で眠りについた。
ともだちにシェアしよう!