199 / 336

第199話 蓮

 いつもの朝が来た。いつもより少しだけ早く目覚めた朝。主任は普段と変わりない。なのに何だろうこのもやもやした気持ち。  自分が女々しくて嫌になる。昨日誰と、どこへ行ってたのとは聞けなかった。明日になればもっと聞き辛い。何も無いなら教えて欲しい。それとも何も無いから、何も言われないのだろうか?  いつまでもぐるぐると思考は同じところを回っている。  いつもの通り、いつもの通り。  そして、昼休みに頭痛の種がやってきた。  「福田ぁ、飯行こう」  「横山んところ緩いな。何でいつも昼休みの始まるちょうどの時間にはここにいるんだよ?」  新入社員が2人戯れているだけそれだけ。  「ねえ、上原くん知ってる?あの子」  山中さんが小声で横山を指差しながら声かけてきた。  「ちょっと有名なのよ。この間の新歓で、俺の好みは営業の田上さんです。応援お願いしますって言ったみたいで。今、ちょっとした話題になってるのよ」  ずくっと重たい音がした。実際に音はしてないけれど確かに聞こえた気がする。  「昨日さ、主任を食事に誘って2人で出かけたみたいだし。ねえ、主任ってもしかしてさあ」  「違うよ」  違うけど、違わないけど違う。指先が震えている。気持ち悪くて吐きそうだ。どうしよう、どこにもぶつけられない気持ち悪さがふつふつとわいてきた。

ともだちにシェアしよう!