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第205話 蓮

 「オカレリー、蓮」  「ザック、微妙に違う。お帰りだから」  「オカエリィ」  「ただいま、母さんは?」  「今、おじさんを駅まで迎えに行ったからすぐ戻るよ」  「そう?ザックってさ……ザックはなぜ俺の事が好きなの?」  「蓮だから好き、他に何かある?」  ウインクすると、さっと跪いた。  「蓮、俺と結婚して」  ふざけてはいない、その顔は真剣だ。  「男同士じゃ結婚できないんだよ、認めてももらえないからね」  「アメリカじゃ結婚できるよ、それに誰に認めてもらう必要があるの?自分が認めた人なのに?」  「心変わりしないとも限らないじゃない」  「先の事ばかり心配していたら、今何もできないじゃん」  そうだよね、今が大切。うん、今が続く先に未来はあるんだ。  自分が認めていればそれで良い。そうかもしれない。  顔をあげた瞬間にザックに強く抱きしめられた。いきなりの行動に身をかわすこともできず、しっかりと腕の中に抱きとらわれた。  「蓮にそんな顔させるのって、匠だよね?悔しいな」  そして優しく口づけ……られそうになった。  「お前っ、何をしてるんだ!」  え、主任?  ものすごい勢いでザックから引き剥がされた。今にもザックに殴りかかりそうな勢いだ。  「ええっ、匠さん?な、なんで?」  「お前、様子がおかしかったのってこれか?いつからだ、いつからこいつと」  え?怒りで震えている主任に何か大きな勘違いがあると知る。ザックも睨み返してるし、ややこしいことになりそうだ。何か変な方向に話が向かいそうだ。  「あら?みんなして何突っ立ってるの?はいはい邪魔、邪魔。蓮、手伝って頂戴」  母さんが絶好のタイミングで分けて入ってきた。二人とも一旦離れたし、良かった。けれど、なぜ主任がここに居るのだろう。

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