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第222話 匠

 多分、上原は連絡しなかった俺に少し怒っているのだろう。不安になりつつも俺は実家に送り届けて独り帰ることにした。   ふと、帰りながらあいつが何を考え、どう思っているのかを聞いておくべきだったと硬化しし始めた。ばつが悪かったのは、自分自身のくだらないプライドとザックへの嫉妬のせいだ。  渡しそびれたプレゼントは、部屋に置かれたまま。誰にも触れられることなく週末を迎えた。  月曜日の夜に「迎えに行くよ」と会社から実家にいるはずの上原にメールを入れると、もうマンションにいると言う。なぜか嫌な予感がした。  早く帰りたい、そしてそんな時に限って仕事が終わらない。  仕事が終わり急いでマンションの部屋に戻ると、上原が自分の荷物を整理していた。  「蓮、お前一体何をしているんだ?」  「あ、匠さんおかえりなさい。少し、話があるのですが?いいですか」  え、いきなりの別れ話なのか、誕生日を知らん顔したのは悪いとは思うけれどそれだけで?  「ちょっと待って」 いきなりの話に頭がついていかない。ミネラルウオーターのボトルを出して飲むと、大きく呼吸して自分を落ち着かせる。  「どういう事?」    自分の声があまりにも冷静に聞こえて、驚いた。  「一人でもきちんと生きていけるようにならないと、この先駄目じゃないのかなと思い始めたんです」  この話は、別れ話以外の何にも聞こえない。

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