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第225話 蓮

 シャツの中に潜りこんできた主任の手が気持ち良い。忙しくてこのところ主任に触れてなかった事に改めて気がついた。  「蓮、夕飯は?」  「実家で軽く食べては来たのですが」  「それじゃ、良いかな」  「匠さん、夕飯はまでですよね?キッチンに実家からもらってきた、煮物と魚が……あ……んっ、匠さん?」  首筋を甘く噛まれた。あれ?何か変なスイッチ入ってるような気が……  食事はどうするのだろう。  「蓮、何考えてるの?他の事考えていたら駄目でしょう?こっちを見て。俺、十日ほど置いてけぼりだったんだけど?」  そう言われて、自分が忙しくて、くたくただったと思い出す。そんなに主任と肌を重ねてないなんて思いもしなかった。  改めて十日と言われると、急に飢餓感が湧いてくる。  しっかりとしがみついて、主任の体温と匂いに包まれる。それだけで動悸が速くなり、呼吸があかってしまう。  「どうしたの?色っぽい目をして、奥さんも合意って事でいいかな?」  ふざけて奥さんと呼ばれる、俺の事だとは思うけど、どこからどう見ても俺は女性には見えないはず。  主任の目にはどう映ってるんだろ。  「あ、きもち……いい」  「今日は素直で可愛いな、ん?どこが一番いい?」  どこがって言われても困る。  場所じゃないよね、ここは寝室だし。  「どこが一番気持ち良いが俺にちゃんと教えて」  「全部、ぜんぶです。匠さんの腕の中にいられるのであれば……」  主任の肩に手をかけて、後ろに倒れながら自分の身体の上に主任を引っぱって倒した。

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