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第227話 蓮
最初は冷やりとした主任の手がだんだんと熱を持ってくる。その手が身体中にぼつぼつと小さな炎を灯していく。
やがて全てを焼き尽くす大きなうねりになって、自分ではコントロールできない波にのまれるのだろう。
「匠さん、独りで寂しかったのですか?」
そう聞くと微笑む主任がいた。
「おまえはどうだった?」
質問に質問で返される。返事をする代わりに口づけをする。何度か繰り返すうちに心地よくて、それでいて切なくてたまらなくなる。
なぜかもう全てがどうでもよくて。早く足りないところを埋めて欲しくて近くにぐっと引き寄せる。
心に積もっていた懸念や心配も少しずつ霧が晴れるように消えていく。
主任受け入れる度に不思議な気持ちになる。これが自分にとって一番正しい居場所だと言われているようでたまらない。
リズに言われた言葉を思い出した。
『ねえ、蓮。後から自分が一番後悔しない道を選びなさい。人と人が出会うのには理由があるの。最初から出会うように決まっているのよ。だからザックが日本に行くと言った時も止めなかったわ。この先の道は誰にもわからない。もしかしたらザックの道は蓮と重なっているかもしれないし、そうじゃないかもしれない』
出会うように決まっていたんだ。
俺には……。
この腕の中以外、俺のいる所なんてない。
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