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第235話 蓮

 あ、主任のスイッチがどこかで入ったようだ。抱きしめられている腕に力が入り呼吸が苦しくなる。ゆっくりとビングの床に降ろされると倒された。 「匠さん!ちょっと、待ってください」  そう言うとニッと笑われた。  「蓮、風呂入ろうか?」  主任が立ち上がると、俺の手を取る。そしてその手を繋いだまま歩き出した、手をつないで風呂場まで行くってどうなんだろう。  「蓮?下向いてどうした?」  恥ずかしいという気持ちしかない。  いや、もう何回も恥ずかしい事はしてるのだろうけれど、手を繋いで風呂場まで行くというのは違う意味で恥ずかしい。主任が顔を覗き込んできた。  「蓮、どうした?そんな色っぽい顔をして。俺、もしかして誘われてる?」  いや、色っぽいって違いますから。もう、いたたまれない。  「あの、匠さん。自分でできますから」  「ん?何?」  主任は手際よく俺のシャツのボタンを外していく、まるで俺の台詞は聞こえないように。  「はい、次はこっち」と手を引かれ、風呂場に連れて行かれる。もう抗議しても無駄だと諦めた俺を楽しそうに洗う主任がいる。  明るい浴室内での行為に居たたまれなくなり、顔を逸らすと鏡に映る自分の顔が見えた。その顔は普段見ない自分の欲情した顔。  目の前には愛しい人、自分の身体の上を這う手を追いかけて見つめる。ゆらゆらと、頭の芯がが揺れている。  そして……ゆっくりと目を閉じた。

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