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第247話 蓮
坂下係長と別れて、外に出ると携帯が震えた。取り出してみると、「どこにいる?」と、主任からメッセージが届いていた。
「今、会社の近くの居酒屋を出たところです。これから帰ります」急いでそのメールに返信をした。そして、すぐに携帯が主任からの着信を知らせてきた。
「蓮、今そこに行くから待ってて」
夜の少し冷えた風にふかれながら、通りを見つめていたら主任が歩いてくるのが見えた。ああ、こうやって眺めるのって新鮮。やっぱり、かっこいいな。だんだんと近づいてくるシルエットに心臓の鼓動が速くなる。
もう付き合ってどのくらいになるのだろう?好きという気持ちが、どんどん深くなる。人を好気になる気持ちの上限リミットってあるのかなと思う。
「蓮、お待たせ」
微笑まれて、きゅっとお腹が縮んだ。
「匠さん、どうしましょう、今、すごく抱きつきたい気分です」
小声で呟くと、主任が困ったような顔をした。
「迎えに来て良かった、こんな顔を他の男に見せられたら危なくてしかたないよ」
え?他の男って。誰も俺の事、そう言った目で見てませんからね主任。
「さっきまで福田の愚痴だか、惚気だか分からない話を聞かされてたよ。そして酔った福田を心配して迎えに来た横山見て、突然俺の恋人がどこで誰といるのか心配になってね。迎えに来て正解だったな」
何がどうなって俺が心配されてるのかよくわからないけど、少し嬉しい。やっぱり今この瞬間に飛びつきたくなってしまった。
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