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第250話 匠
これだけ無防備な姿を見せてくれる上原が可愛くて仕方ない。半開きになった口元から甘い吐息に混じって時折、甘い声が聞こえてくる。
「今日は坂下さんと一緒だったの?」
「ん、ぅ、んんっつ」
俺の質問には一生懸命答えてくれようとしてくれているが、意識はもう他へ持って行かれたようだ。
「蓮に他の虫がつかないかと、いつもヒヤヒヤしているよ」
目を丸くして反論しようとしたのか、上原が口を少し開いた。その瞬間にくっと指を後ろの窄まりに押し込むと、返事の代わりに「ぁあっ」と声が聞こえた。
「匠さん、いじがわるいです」
そう言いながらも全く怒ってはいない。ゆるゆると出入りする指を奥に誘い込むように中がうねっている。
「何の話をしていたの?転属願いなら会社で出せるでしょう」
「高校のせんぱい……」
「お前の?」
「ち、ちが、たくみさんの」
「え?ああ、そうか。なるほどね、だからか」
入社した当初、部署が違うのに声をかけられた。困った事があったら相談してと。随分と社交的な人なのかと思っていたら、寡黙でほとんど他の人と交わるところを見かけない。
高校は家から離れた田舎の小さな高校へと進学させられた。だから、会社に入って誰かと、知り合いと会うことがあるとは思いもよらなかった。
という事は、俺と上原の関係も気がついているってところだろうか。別に俺は隠すつもりはないけれど。
「蓮、脚持てる?」
後ろから抱いてやるのが上原は楽だとは思うけれど、上気した顔を見ていたい。潤滑剤の力を借りて出入りする指を増やすと、一瞬ビクンと身体が反応する。
「あ、もう、もダメです」
「蓮、イっていいよ」
「……い…や、です指」
「ん?何が嫌なの?」
「匠さんが良い。あ、いやだ」
お願ですと見上げてるくその顔に、これだから優しくできない、これじゃあ持たないと思ってしまう。それでも俺で感じる上原を見ていると独占欲も征服欲も全てが満たされる。
体重をかけるようにしてゆっくりとその中へ身体を沈めていく、この瞬間の震える姿が一番愛おしい。
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