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第265話 蓮

 主任がいじわるな事を言う時は、何か気に入らないことがある時。今日の理由は明白、今週仕事を優先した事と、江口さんと食事に行った事が絶対に影響してる。子供みたいだと思う、普段は大人なのに。  俺に一体どうしろってのだろう。  「どうしたの蓮?」  やっぱりこの姿勢って、そう言う事だとわかる。主任は絶対に譲る気は無いよね。  「上手にできないかもしれません」  「上手にって?」  主任がぷっと吹き出した。そして声を立てて笑う、何も笑う事無いのにと恥ずかしくなる。  「上手下手じゃなくて、自分が気持ち良いように動いてごらん」  そう言われてもすぐに繋がれるわけじゃない。ここで主任に見つめられながら準備しろって事なのだろうか?  「こっちにおいで、少し意地悪をしたくなったけれど、俺には無理なようだ。それに蓮に任せていたら明日の朝までこのままになるだろうしね」  こうやって主任はいつも優しくしてくれる、甘やかされるのも甘えるのも心地よいと感じてきた。  そして、少しだけ優しくなった主任の表情に嬉しくなった。

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