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第278話 匠
心も身体も疲れているのに腕の中に上原を囲い込むと、全てが帳消しになる。
身体中確かめるように探ると、上原が泣きそうな顔をする。一途な瞳を見ていると大切にしたいのに壊したくて泣かせたくなる。
こいつの笑顔も涙も全て俺だけのもの。
誰にも欠片も渡さない、触らせさえしない。口づけると、自分から舌を絡めてくる。
「昨日寝てないから、どのくらい頑張れるかわからないけど」
寝不足と気持ちとで身体のバランスがとれないと伝えると上原がくすくすと笑う。
「あんまり頑張らないで下さいね。明日、動けなくなりますから」
そう言われても手加減の仕方はわからない。感情の赴くまま上原の身体を拓いていく。胸に指先で優しく触れるだけで、上原の身体はびくっと反り返る。
「どうしたの、どこ触っても反応が良いんだけれど」
「………余計な事は言わないでくださいって……いつも言ってるのに」
睨むように下から見上げる上原が可愛くて仕方ない。
「拗ねても可愛いだけだから」
音を立てて鼻の先に口づけると、顎を上げて唇に触れてほしそうに追いかけてくる。
これは俺も今日は寝落ちるだろうなと、目の前の可愛い恋人に深く口づけた。
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