目の前で閉まったエレベーターのドアにハッと気がついたように次ぎの階で降りると階段を使って、すぐに江口を追いかけた。俺が捕まえる前に生産部の女性が「お客様です」と、江口を連れて行ってしまった。 　「先に上原さんが会議室に入ってます。すぐにお願いします」 　そう言われて一瞬俺を振り返ると「上原と一緒に会議だ、仕方ないな。また後でな、田上」と、会議室へ入っていった。 　上原と二人きりじゃないのはわかってる。仕事だともわかっている。なのに……速くなった心臓から送られて来る血流が一気に頭に集中してくらくらする。 　自分の恋人の写真が、それも裸の他の男の携帯の中にある。許せるわけが無い、あの画像を消させなきゃいけない。 　視姦されると思うだけで腹が立つ。江口に連絡をくれとメッセージを残したが、何も連絡はなく一日が終わった。 　その怒りを上原にぶつけても仕方ないとはわかっているけれど、顔を見た瞬間に爆発してしまった。 　「悪い、何だか一日中お前のことを待っていたような気分になってたよ」 　上原にしてみれば、いきなり何を言われているのかさえ、分からず困惑しているのだろう。 　「明日、きちんと話してみます。匠さんが、いるとややこしくなりそうですから一人できちんと伝えます」 　上原に言われて少し大人気ないような気もしてきた。出来ればこれでもう終わりにして欲しい。こいつの周りは俺を不機嫌にしてくれる輩でいっぱいだ。 　「蓮、いい子だから、これ以上他の男を惹きつけないでくれるかな。俺の心臓はこれ以上のストレスには耐えられそうにもないよ」 　「何馬鹿な事を言っているんですか」そう言って無自覚な俺の仔犬は笑っていた。