295 / 336

第295話 蓮

 あれ……ここは…どこだろう?  ここは、どこだ真っ暗で何も見えない。  どういしたんだろう、体が動かない。  痛い……何が起きたのだろう。  目が……あかない。  ……意識が……薄く…。  「……れ……ん」  遠くで何かが聞こえる。誰かがぼんやりと見える。  「れん!」  あ……誰かの声がする。身体が動かせない。  返事しなきゃいけない、けれど声がでない。俺はどうしたんだろう。  「れん…れ…ん」  誰の声だろう、何故俺を呼んでいるんだろう。眠い、ほっといてくれ。  ずきっと足に痛みが走った、なんだこれ。  目をゆっくりと開けた。  見えたのは白い天井と、上から覗き込む泣きそうな母親。  「母さん、どうしたの?」  何で母親がここで泣いているんだ?  「看護師さん!先生を呼んでください」  母親の叫ぶような声がした。  また眠たくなって目を閉じた。  次に目覚めた時は、たくさんの人が覗き込んでいた。  「初めまして、担当医の遠藤です」    「はい?初め……まして」  「気が付いてよかったね。心配していたよみんな、まず幾つか質問させてくださいね。あなたのお名前と年齢を教えて下さい」  「え?上原蓮…じ、19歳です」

ともだちにシェアしよう!