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第323話 匠
怖がらせないようにゆっくりと、初めて抱いた時のことを思い出す。髪を指でゆっくりと梳くと上原は俺の目を見て「好きです」と、突然言う。
「またお前は……」
そう言って笑うと上原は不思議そうな顔をする。
「いつも最初はお前の告白からだな。お前にとっては最初でも、俺には二度目だ」
ここまで来て止めたくはない。時間を確認する。このままだと、会社は午前中休む事になるかもしれない。そろそろ会社に行く準備をしなくてはいけない、さすがに金曜日に突然休むわけにはいかない。
「今、俺かなり葛藤してんだけど、蓮が今日の夜までに心変わりしないかと不安だよ」
ぎゅっと身体を縮めた上原は「どうしてですか?」と、俺の目を見て言う。ああ、大丈夫だ。こいつの目には迷いが無い。記憶が戻ったわけじゃ無い、それでも俺で良いんだ。
「今日の夜まで大人しく待っててくれるか?どこにも今日は出るなよ、頼むから。後で電話する、一緒に出かけよう」
「はい」と、俯きがちに小さい声で言う上原が可愛くて。
一気に下着を脱がせて上原の身体の中心と自分自身をあわせて一緒にまとめるようにして扱き上げる。
「蓮も手を貸して」
上原が慌てて手を添える。お互いの熱を感じながら深く口付けると「んっ」と声が出る。重なった唇が離れようとすると追いかけてくる、久々の口づけに酸素が足りなくなったように頭がくらくらする。何度も何度もより深く口づける。
舌先で上顎を舐めると、上原が身体を震わせて果てた。その熱に追われて俺自身も上原の身体に欲を吐き出した。
肩で息をする上原の身体を抱き起こしてシャワーへ連れて行ってやる。
「毎回イス持ってくるより、毎回俺がここへこうやって届けてやるよ」
「た、田上さんっ、恥ずかしいからやめてください」
耳まで赤くなる上原を見てもう一度ベッドへ引きずり戻したい欲求がわいてきた。
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