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第326話 蓮
田上さんについて来たけれど、これって二人で一晩過ごすと言うこと。それが意味することはなんとなくわかっている。部屋に着いてから落ち着かない。
いや、そもそも泊まるって答えたっけ?俺……。
寝る場所は目の前のベッド一つなわけで、なんとなくと言うより今朝の事を考えると、この先は容易に想像できる。
「はあ……」と、ため息が出る。俺はどうすればいい?
「蓮、おいで」
そう言われて田上さんの方を見るとベッドに腰掛けて、手を伸ばしている。
「あの……」
戸惑いながら話しかけるのと同時に、ベッドに引き倒された。
えっ?ええっ?これって、一気に緊張が走る、それより怖い。
ぎゅっと目をつぶる。
「ふっ、まあね、焦らなくても良いかな」
田上さんがすっと離れた。目を開けると笑顔の田上さんがいて安心する。
「身体は覚えてるんじゃないかな、なんて期待しているけど、気持ち伴わないと男同士の場合は悲惨だからな。無理強いはしないよ、無理だったらやめる」
「ご、ごめんなさいっ。怖いって言うか、その……怖いのです」
「へえ、怖いか、怖いね。じゃあ、本当に怖いのは何か試してみる?」
「えっ?だって……たった今、無理だったらやめるって……」
「だから、無理強いはしないってことだよ」
そう言う田上さんは笑いながらも真剣な瞳だった。
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