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第334話 蓮

 持ち上げるよう抱え込まれて体の最奥で田上さんを感じながら、何を俺は怖がっていたのかと不思議になる。  「っ…あぁあ……、あ……んっ」  恥ずかしいと思っていたはずなのに声も止まらない。身体はもっとと、田上さんを求めている。  好きだという思いが止まらない。こんなに愛しい人をどうして忘れることができるのだろうか。  それとも今、俺はこの人に初めて恋をしたのだろうか。それさえわからない。  「好き……好きです」  気がついたら声になっていた。田上さんさえいればきっと大丈夫。そう思える。  「愛してるよ、蓮。お前しか要らない、たとえ誰を敵に回してもお前を手放すことが俺にはできない」  「匠さんっ、あ、や…そこ変です。あ、あっ……」  嫌だと言うとその一点を中心に田上さんが突いてくる。そのまま頭がショートするように押し上げられ落とされる。身体がびくびくと痙攣する。  「ぁあ……ああっ…」  声が出て意識がばらばらになり、そして拡散していく。もう頭は何も考えられない、感覚さえ溶けて消えていきそうだ。汗で滑る肌も快感しか与えてくれない。全身が少しの刺激でスパークしそうになる。  「このまま…ずっと俺といると、俺と離れないと約束して、蓮」  水の中に響くようにぼんやりと聞こえる田上さんの言葉にうなづくことしかできない。大きく身体を揺らされたように感じた。そしてぷつんと意識が途絶えてしまった。

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