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恋人? 《早苗》

柳くんのお家に到着した。 「こんばんはー」 「あ、早苗さん!」 「おいこら碧、ちゃんと挨拶しろ」 「兄ちゃんうっさい」 「んだと、こら」 学校から、徒歩数分のアパート。 柳くんはそこで柳くんのお母さんとしゅんくん、あおくんと暮らしている。 「兄ちゃんに言われなくても今からするっつーの!」 「ったく、生意気め」 「兄ちゃんこそ早くシャワー浴びてこいよくせー」 「うるせー、今から行くんだよ」 あおくんと柳くんは仲良しだ。 ちょっとだけ、うらやましい。 「早苗さん、こんばんは!」 「こんばんはー、あおくん」 「今日も勉強教えてよ!」 「もちろん。偉いねぇ、ちゃんとお勉強して」 「まぁね! 兄ちゃんとは違うから」 ちょうど着替えを持ってきた柳くんが舌打ちして、お風呂場に向かった。 「兄ちゃん不良だから、困っちゃうね?」 「そう? 柳くんとっても優しいよ」 「えー、早苗さんだまされちゃダメだよ。兄ちゃんはね狼だからっ」 「狼かぁ、確かにねー」 ワイルドでかっこいいもんね。 「早苗さんは羊だから、油断したら食べられちゃうよ!」 「僕が羊? 狼って山羊だけじゃなく羊も食べるのかなぁ」 「細かいことはいーの!」 僕が羊かぁ。 そんなにふわふわしてるかな? 髪の毛もそんなにくせっ毛じゃないんだけどなぁ。 「あー、早苗さーん」 「どうしたのー、あおくん」 「この分数の計算どうやるの?」 「それはねー、まず通分してねぇーー」 勉強は昔からちょっぴり得意。 柳くんの家に来たら、よくあおくんやしゅんくんに勉強を教えてあげている。 勉強熱心で教えるのも楽しい。 「そういえばさ」 「どうしたの?」 算数のプリントを終えて漢字練習を始めたあおくんが、熱心に筆を進めながら言った。 「兄ちゃんと早苗さんって付き合ってるの?」 「え?」 「なんかね、友達の姉ちゃんが男同士でも恋人になれるって」 「まぁ、そういう人もいると思うけど、僕と柳くんは友達だよ」 「ちぇー、もし恋人なら早苗さんもっと家に来てくれそーだと思ったのになー」 ちょっとびっくりした。 僕と柳くんって、そんな風に見える? あおくんは、たいして深く考えている訳でないらしくすぐにほかの話題に移っていった。 僕と柳くんが恋人……。 想像してみても意外と違和感はない、気がする……。 今まで考えたこと無かったけど、男同士でも恋愛ってあるんだよね。

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