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ハンバーグ 《剣介》

シャワーを終えてリビングに向かう。 「これは過去形だよ。ほらここ、yesterdayって書いてる」 「あ、ほんとだ」 「しゅんくんはうっかりミスが殆どだよねぇ」 「んー、結構見落とす」 「ゆっくり確認してやったら、理解してるから大丈夫だよ」 「ほんと? ありがとう早苗さん」 リビングでは、上の弟隼介と早苗が勉強中。 下の弟の碧はその横で大人しく漢字を書いている。  ほんと早苗になつきまくりだよなこいつらは。 「あ、兄ちゃんおかえりー」 「おう、真面目にやってんなぁ」 「おかえり柳くん」 「おー、わりぃないつも」 髪をタオルで拭きながらテーブルをはさんで早苗の向かいに座る。 「兄ちゃん、さっき母さんから電話きてた」 「あー、なんだって?」 隼介がこちらを見もせずに言う。 「ハンバーグが食べたくて食べたくて仕方ないから作って、何が何でも作って、だって」 「ハンバーグって、おい。今から作れってのかよ」 「いつものことじゃん」 「あいつめ……」 仕事が忙しく、帰りが遅い事も多いお袋。 今日は何が食べたいだの、これ買っておいてだのよく電話がある。 人使いの荒いやつだ。 俺だって部活で疲れきってるっつーのに。 「柳くんのハンバーグ美味しいだろうねぇ」 「すっごいうまいよ!!」 「柳くんが作ってくれるなら、お肉も食べれそう」 ため息をつく俺をよそに、呑気な早苗と碧は楽しそうだ。 つか早苗にそんなこと言われたら、悪ぃ気はしないっつーか。 時計を再度確認すると時刻は七時を回った所。 お袋は遅くて九時には帰ってくるか。 時間を逆算しつつ、冷蔵庫の中を確認する。 ひき肉が少ないから豆腐ハンバーグだな。 明日の弁当に入るように、多めに作って早苗にも食わせてやろう。

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