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好き? 《早苗》
柳くんは優しい。
「ごめんね、ハンバーグ作んなきゃなのに」
「別に。ほら、さみぃからちゃんとマフラーしろ」
「うわわ……ありがと」
中途半端に巻いていたマフラーを柳くんが付け直してくれる。
もう遅いからと僕の家まで送ってくれるだけでもすごく優しいなって思うのに、こんなこともしてくれる。
ほんとかっこいい。
「柳くんって、かっこいいね」
「はぁ!? んだよ、いきなり」
「だってしっかりしてるし、優しいし、料理だって作れるし。女の子にもモテモテでしょ?」
「おめぇは……。俺が女と話してるとこ見たことあるか?」
「んー、あ。ないかも」
「だろ? 顔が怖ぇから避けられまくってんだよ。誰がモテモテだ」
すっかり日が落ちた暗い道を歩いてそんな話をしていると、ふとさっきのあおくんとの会話を思い出した。
『兄ちゃんと早苗さんって付き合ってるの?』
深い意味は無い質問だったと思う。
けど、僕は……。
「僕なら柳くんのこと彼氏にしてあげるのになぁ」
いつもと同じ調子で、冗談っぽく。
こっそり隣を歩く柳くんを見上げ様子をうかがう。
ほんとはこんなにずるいって知ったら、柳くんは僕のこと嫌いになるかな?
「……ばーか。んだよその上から目線は」
少し間を空けて、柳くんの切れ長な目が僕を見た。
目があうと切れ長なその目をぎゅっとつむり、僕の好きな柳くんの笑顔。
あぁ、やっぱり僕たちは友達だよね。
「だって柳くんはシャイだからぐいぐい肉食でせめないと」
「肉嫌いな奴が肉食とかねぇだろ」
「必要な分しか摂らないだけですー」
「おめぇは摂らなすぎだ」
柳くんが離れていくのは嫌だから。
気づきそうになった気持ちは胸の奥に押し込める。
ちょっとだけ恋人でもいいかな、なんて思ったのは秘密にしないと。
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