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愛してる人 《早苗》

柳くんは秋良ちゃんと何を話しているんだろう? いつもなら柳くんが隣にいるからお話して昼休みは終わっていた。 柳くんがいないだけで、すっかり手持ち無沙汰になっていた。 朝と同じように次の時間の予習でもしようかと考えていると、声をかけられた。 「かっしー、やっほー」 「あ、桜井くん」 桜井龍太郎(さくらい りゅうたろう)くん。 髪を茶色く染めていて、少し不良っぽいクラスメイトだ。 たしか秋良ちゃんと仲がよかったはず。 「秋良しらない?」 「えっと、柳くんがお話あるみたいで一緒にどこか行っちゃった」 「あー、そっか。ほんとにやってんだあいつ……」 「ん?」 「いや、なんでもないよー。ただ最近あいつ柳とかっしーに夢中なんだよね」 「夢中……?」 「そー、二人とも仲いいなぁって」 「そうなんだ」 やっぱり、秋良ちゃんは柳くんのこと好きなのかな? 「かっしーはさ、好きな人いたりするの?」 桜井くんが突然そんなことを聞いてきた。 好きな人。 真っ先に思い浮かぶのは柳くん。 「柳とか?」 「あ、や、柳くんは友達だし大好きだよ」 慌ててそう返すと、胸がちくりと痛んだ。 友達……友達としてだけなのかな。 よくわからないけど、違和感が残った。 「まぁ、そうだよね。じゃあ女の子?」 「えっと……友達として好きな子はいるけど、それ以上はないかな」 「ふぅん、そうなんだ」 「桜井くんはいるの好きなひと?」 「うん、愛してる人がいるよー」 「わぁ、愛しちゃってるんだ、どんな人なの?」 「ちょっと気が強くて素直じゃないんだけど、めちゃくちゃ美人で何気に優しい人」 にこにこと話す桜井くんは幸せそうで、ちょっとだけうらやましかった。

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