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憧れ 《剣介》

教室につくと、早苗は桜井と話していた。 桜井には林宮がいるしそんなことは無いのだろうけど、俺の狭い心はぎゅっと苦しくなった。 「かっしー、龍太郎、ただいまー!」 「あぁ、やっときたなー、秋良。て、あれ涼香ちゃん」 「携帯また忘れてたぞ」 「ありがとー、涼香ちゃん」 「別に……」 人の目も気にせず堂々といちゃつく二人を見ていられず、目を逸らすと早苗と目があった。 じっと真剣な顔で俺を見つめてくる。 暫くは見つめ返していたものの気恥ずかしくなり、そっと早苗に近づき軽くチョップをくらわせた。 「どうした?」 「ううん、なんでもないよ」 作り笑いを顔に張り付ける早苗。 なにを桜井と話してたんだろう? 「涼香ちゃん大好きだわぁ」 「うるさい、馬鹿……」 赤くなる林宮の頬に桜井がそっと、自然に唇をあてた。 幸せそうで幸せそうで。 たまらなくなる。 俺と早苗がもしこんな風になれたなら。 堂々と早苗が好きだと言える勇気があったのなら。 どんなにいいだろうか。

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