26 / 127

一番3 《早苗》

複雑な気分のまま待っていると、買い物を終えた柳くんが戻ってきた。 「待ったか?」 「ううん、いこ」 さすがに柳くんが秋良ちゃんと話しているのが嫌なんていえないから、いつも通り笑って返した。 つもりなんだけど、柳くんは怪訝そうに僕を見つめた。 「な、なに。そんなに見つめて」 「いや、作り笑いだなぁと思って」 「そ、そんなことないよ」 「ふぅん」 じーっと見つめられて、居心地が悪くなる。 目を逸らし、どうしようかと思っていると、 「柳くん!」 「いって!」 ばしんと柳くんの背中を叩き、秋良ちゃんがあらわれた。 「なにすんだよ!」 「いやぁ、気合いをいれてあげようかなって」 「はぁ?」 「あぁ、ごめんねいい雰囲気なのに!」 「うるせぇ、どっかいけよ」 「はーい。じゃあねぇ、かっしー!」 「あ、うん」 やけに嬉しそうに微笑みながら秋良ちゃんは行ってしまった。 やっぱり、なんというか 「仲良しだね?」 じっと柳くんを見上げながらついついそんなことを言ってしまう。 すると柳くんは驚いた顔をして、それからにやっと笑った。 「それで拗ねてたのか」 「べ、別に拗ねてなんか……」 「かわいい奴」 柳くんはなんだかとても嬉しそうに僕の頭を撫でた。 よくわからなかったけど、柳くんがこんな風ににっこり笑うのは珍しくて、その笑顔にちょっとだけ見とれてしまった。 「榎本とは全然仲良くねぇし、早苗が一番だから安心しろ」 ぼそっと柳くんはそう言った。 目が合うと照れくさそうにはにかむ。 「行くぞ、腹減ったし」 「あ、うん!」 柳くんが歩き出して、僕もその後ろをついて行った。 早苗が一番ーー。 友達としてって事だろうけど、それでもとっても嬉しくて、さっきまでのもやもやした気持ちもどこかへ行ってしまった。 僕も柳くんが一番だよ。 なんて、柳くんの赤くなった耳を見つめながらついつい思ってしまった。

ともだちにシェアしよう!