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テスト1 《剣介》
いよいよテスト一週間前になった。
「今日から部活なしだよね?」
「おう、勉強するかー」
ついついため息が漏れる。
お袋が決めた部活を続ける条件が赤点をとらない、学業に支障をきたさないってのだから、やるしかないんだけど。
根っからの体育会系の俺にとってはとてもつらい、部活ができないのが特に。
「柳くんの家で一緒に勉強していい?」
「あぁ、おめぇがいないと困る」
「じゃあ、今回は行かないでおこうかな」
「なんでだよ! お菓子買ってあげるから来なさい」
「すごい誘拐犯みたいな発言だね」
「そうそう、お袋がケーキもらってきたんだよなぁ」
「チョコケーキはありますか?」
「チョコもチーズもモンブランもあるぞー」
「行きます」
「ちょろいな」
それでもこうして、いつもより早苗と一緒にいれる時間が増えるから、まぁなんとかやっていける。
ケーキの話を持ち出した途端、てきぱきと帰る支度をしはじめる早苗も、ものすごく可愛い。
「柳くん早く準備して」
「はいはい、ちょっと待て」
「はーやーくー、ケーキが待ってるんだから!」
「ケーキも食うけど、勉強すんだからな?」
「わかってるよ。ケーキ食べたらしっかり英語と数学と化学やろうねー?」
上機嫌な早苗はほんとに可愛くて、だからついついケーキとかお菓子とか与えたくなる。
多分、早苗が喜ぶこととか早苗に求められたことは、なんだってしたくなってしまうんだ。
「おう、そんじゃ行くか」
「んふふー、ケーキ楽しみー!」
これは完全にケーキしか見えてないな。
ケーキに負けたような、そんな複雑な気分のまま教室を出た。
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