32 / 127

テスト6 《剣介》

勉強もしっかりできないまま、いつもより早めの時間に早苗を送っていく。 冬空は重苦しい雲もなく、青い空がみえていて、ほんの少し気持ちを落ちつかせてくれた。 「空、見えてるね」 「あぁ」 同じとこを見てたとわかるだけで、こんなに嬉しいのはなぜなんだろう。 同じ気持ちだったら、どんなに嬉しいのだろうか。 「あのね、さっき言い掛けたことだけど」 うっすらと積もった雪を踏みしめながら、少し前を歩く早苗がそう声に出した。 「テスト終わったらちゃんと話すから。だから、今は勉強しないと、でしょ?」 振り返った早苗はにこりと微笑む。 お互い、今の微妙な空気は堪えられないらしい。 「そうだな。明日は、やんねぇとな」 「赤点とったら、柔道出来なくなっちゃうしねー」 「早苗が教えてくれてるから、心配ねぇだろ」 「いっつも英語はぎりぎりだけどねぇ?」 「ぎりぎりでも赤点じゃねぇから……明日は、英語な」 早苗の言おうとしてることが、期待通りなのか期待外れの事なのかまだわからないけど。 今はただこのまま……。

ともだちにシェアしよう!