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テスト終わりに3 《龍太郎》
俺のマネをして長めに伸ばした癖っ毛。
眼鏡はあんまり似合わない子。
「りゅう、やっほー!」
にこにこ笑ってそいつは走ってきた。
樺島江(かしま こう)。
俺と秋良の幼馴染だ。
「りゅうと秋良と……美人さん!」
「涼香ちゃんな、いい加減覚えなさいな」
「涼香さんね、覚えてるってば。涼香さーん、これから暇ならモデルしてくれませんか?」
江は絵を描くのが好きだ。
高校では、俺らの一年後輩で美術部に入部してる。
綺麗な人を見ると絵のモデルを頼みたくなるみたいで、これまでも何度か涼香ちゃんをスカウトしている。
「……断る」
「写真だけでもお願いします!」
涼香ちゃんは結構嫌そうな顔をして、黙々と食べ始めてしまう。
「もー、彼氏の前でナンパしないでくんない?」
江に向かって言うと、どんっとテーブルの下で足を蹴られた。
涼香ちゃんだ。
見ると黙々と食べながらも顔が赤くなっていて、目が合うと睨まれた。
ねぇ、ほんと可愛い。
「あ、そうだったね! じゃあ彼氏、写真の一枚でも見」
「樺島。もってきたけど」
ターゲットを俺に変えて話しかけてくる江の元に、背の高い人がやってくる。
松谷一(まつや はじめ)さん。
高三で柔道部の元部長で、江の友達というかなんというか。
詳しい関係は、まだ聞けていない。
「あ、松谷さん! ごめんなさい」
「いいよ。えっと、久しぶりだな桜井に林宮に秋良ちゃん?」
この間会ったのはそこそこ前だが、江と違って名前をしっかり覚えていた。
「お久しぶりです、松谷さん!」
何かというと名前で呼ばれたがる秋良は、めちゃくちゃ喜んでるし。
人見知りな涼香ちゃんは、気まずそうに黙々と食べていて、ついつい頬が緩んでしまう。
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