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テスト終わりに5 《涼香》

幸い誰もいなくて、一息つくことが出来た。 手を洗って鏡を見て、自分を落ち着かせる。 顔が少し赤い、眉間にまたシワを寄せていた。 人といるのは、どうもなれないし苦手だ。 どう話して、どう接すればいいのかわからない。 睨むのも良くないってわかってる。 けど、笑顔なんてもっと無理だと思う。 龍太郎の前でもまだうまく笑えないのに……。 「……」 いや、別に龍太郎に対して自然体でいたいとかそういうんじゃない。 鏡に映る顔がさっきより赤くなっていて、見ていられない。 『デレデレ』なんてしていない、まったくもって絶対に。 「すーずかちゃん?」 扉が開いて龍太郎が入ってきた。 「なんだよ。もう、戻るから」 赤くなってる顔を見られたくなくて、そっぽを向く。 すると龍太郎はくすくすと笑った。 文句の一つでも言ってやろうとするとぎゅっと抱きしめられる。 「な、に……いきなり」 「んー? 愛おしいなって、思って」 「意味わかんない」 「ちゅーしよ?」 龍太郎といると調子が狂う。 したいわけじゃないのに、顔が勝手に龍太郎の方を向いてしまう。 「ちゅーするよ、涼香ちゃん?」 満足気に笑って、龍太郎の顔が近づいてくる。 目を閉じると、触れるだけのキスをされた。 「もっと?」 そんな風に聞いて焦らしては、俺の反応を楽しんでる。 軽く睨むと啄むようなキスをされた。 上唇から下唇とゆっくりと焦らすように、優しい口付けを何度となく落としてくる。 身体が火照り、もっと強い刺激が欲しくなる。 だが、そんな状態で口が離された。 不安になって見上げると、龍太郎は意味深に微笑む。 「こっち」 「えっ、なんで個室に……」 手を引かれトイレの個室に二人で入った。

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