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テスト終わりに6 《涼香》
洋式の便器の上に龍太郎が座り、俺はその膝の上に対面するように乗せられた。
「なんかさ、イケナイことしてる気分」
「……変態」
「ふふ……ね、涼香ちゃんから、して?」
ほとんど身長は変わらないけど俺のほうが低いから、こうして龍太郎を少し上から見下ろすのは優越感があった。
龍太郎の閉じた目のまつげが長い。
俺のことをきれいだとか可愛いだとかこいつは言うけど、十分に龍太郎も綺麗だと思う。
軽く口付けて、少し開いた口元に恐る恐る舌をいれる。
すると、龍太郎が舌を絡めてきて背筋がぞくりとした。
口腔をじっくりとかき回されると、徐々に身体は熱くなり、頭は真っ白になってしまう。
口が離れると、荒く息を吐いた。
「デレデレな涼香ちゃんも、好きだよ」
ぎゅっと抱きしめられ、耳元で囁かれる。
デレデレなんてしてるつもりはない。
どうしても、なってしまうだけ……。
体を預け荒い息を整えると、あることに気付いてしまった。
「……おい」
「どしたー?」
「なんか、当たってるんだけど……」
「涼香ちゃんエロいから、たっちゃったー」
隠すつもりもないのか、堂々と言われるが、気付いてしまうと居心地が悪くなる。
「どうすんだよ」
「落ち着くまでちょっと待って」
抱きしめられるけど、当たってるそれが気になって仕方がない。
「……そんな、溜まってるのか?」
「んー、そうね。テスト勉強するからって、相手してくんなかったしねー」
「そんなの当たり前だろ。だいたい、お前がすぐそういうことしようとするから、一緒にいたくなかったのに」
「我慢してたから、してくれないかなー? ご主人様」
みんなで勉強してた時に、そんな話してたんだっけ。
龍太郎が犬で、俺が飼い主って。
「……ほんと、お前犬みたいだよな」
「わん」
ついつい笑ってしまう。
こいつといるのは、どうしてこうも居心地がいいのだろう。
「ここでは嫌だぞ」
「流石にしないって。え、むしろしたい?」
「このまま放置して何日我慢出来るか試してみるか?」
「ごめんて。けど、そういうのもいいかもね」
「……」
「自分で言っといて、そんな引かなくてもいいじゃーん。なんなら今日家に人いないよ、夕方まで。ね!」
「嫌だよ。ぎりぎりまでやるからお前の妹に見つかりかけただろ、この前」
「スリルあっていいじゃん。……うそうそ、そんな目しないでよー! ね、ちゃんと早めに切り上げるし」
龍太郎はへらへらしてるけど、切羽詰まった感じ。
この表情、色っぽくて誰にもみせたくない。
「というか、まだおさまんないの?」
「なんか、涼香ちゃん前にすると興奮しちゃう、みたいな」
「早くしてくんないと夕方まで時間なくなる」
「え、うちに来てくれるの?」
特に肯定も否定もせず、龍太郎に抱きつく。
それでも多分、こいつならわかってくれる。
「涼香ちゃん」
「なに?」
「大好き」
「……うるさい」
こいつの甘ったるい言葉も温もりも嫌いじゃない。
どれだけ突き放しても受け止めてくれて、何も言わなくてもわかってくれる。
俺には勿体ないくらい、素敵な人。
けど離したくない。
そばにいる居心地のよさを知ってしまった今は。
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