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テスト終わりに7 《江》

涼香さんが席を立って、りゅうがそれを追いかけていった。 幼なじみとして、りゅうに恋人が出来たのは嬉しい気もするけど。 「なんか、すごい溺愛してるなりゅうのやつ」 「ね、ラブラブだよねー」 「悲しくないの?」 「なんでよ。あの二人をみてると幸せな気持ちになるんだから」 秋良はそう言って笑ってるけど、知ってるんだ。 幼なじみだから。 「りゅうのこと、好きだったんじゃないの?」 そう言うと、秋良の笑顔がくもる。 ほら、やっぱりそう。 「もー、その話は終わったことでしょ。大体とっくの昔に振られてるっつーの!」 「そうは言ってもさぁ、ね?」 松谷さんをみて言うと彼は静かに微笑む。 「秋良ちゃんが納得して側にいるなら、いいんじゃないか」 「そうなのかなぁ……?」 「松谷さんの言うとおり! 私、今は松谷さんみたいな人がいいって思うし」 「あぁ……えっと」 秋良に言われて、松谷さんは困ったように俺を見てくる。 何その顔、松谷さんってばまんざらでもなさそうなんだけどー。 「ダメだし、松谷さんは!」 投げやりに言って隣に座る松谷さんの腕に抱きつく。 「え、まさか、江と松谷さんも」 秋良は驚いたようだった。 りゅうと涼香さんのこと理解してるみたいだし、俺らだって平気かと思ったけど、なんだか浮かない顔をしていた。 「なんでこうも幼なじみの恋愛対象が男子になっていくの……。私のせいだったりしないよね? なんか女嫌いになるようなオーラでもあるのかな」 「いや、秋良のせいではないんじゃない……」 特別女の人が苦手ってわけでもない。 ただ松谷さんがいいってだけで、他の男を好きになれるかはいまいちわからないし。 「もう結婚式には呼んでね、パスポートとるから」 「わざわざ海外までいって結婚しないから!」 「日本でもいいけどさぁ、ハワイがいいなー」 「いやいや、まず結婚なんて、ね? 松谷さん」 「樺島はどこで挙げたい?」 「する気なの!?」 「お前となら、一生一緒にいたいと思えるし。籍はいれらんないかもだけど、式くらいなら」 「ま、松谷さん!?」 投げやりな秋良とわりと真剣そうに話す松谷さん。 なんだろうこの天然ボケ達は。

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