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テスト終わりに13 《一》

どうしたのと言いたげな顔に微笑みかけて、そのぽつんと立つ雪だるまの元へと連れて行った。 「ひとりじゃ寂しい」 「うん……?」 涙で濡れた彼の目元を優しく拭う。 不思議そうに樺島は俺をみる。 「もうひとつ作ってよ、俺だとうまく作れない」 「雪だるま、つくるの……?」 「うん。ふたりなら寂しくないだろ」 樺島は、笑って小さく息を吐く。 今度は悲しそうな笑顔じゃない。 「うん、つくるっ……」 鼻をすすってしゃがみこみ、樺島は真っ白な新雪をかき集めた。 樺島の手が好きだ。 ごつごつした俺の手と違って、優しくていろんなものを生み出せる。 悲しさだけじゃない。 幸せを彼はつくれるから。 誰が作ったかわからない、少しいびつな雪だるまの横に、きれいで優しい雪だるま。 小さなそいつらは、もう寂しくない。 もうひとりじゃない。 「手」 「手?」 「冷たくなっただろ」 買い物袋を地面に置いて、両手を差し出す。 微笑む樺島は、まだ目元が濡れていて弱々しい。 そっと冷たい手が重なると、それを優しくつつむ。 「俺も……ひとりじゃないね」 「うん。俺がいる」 穏やかに樺島が微笑む。 樺島が笑えば、俺もつい笑ってしまう。 「帰ろっか。カレー、食べていったら?」 「うん。久々に泊まってもいいか?」 片方の手は繋いだまま、買い物袋を手に持って樺島の家へと向かう。 「いいよ! 一緒にいれるの、嬉しい」 樺島はちょっと元気になった。 俺もちゃんと、彼を支えられてると思ってもいいのかな。 「松谷さん」 「なんだ?」 「ありがとう」 見上げてくる樺島が愛おしい。 こんなにも大切に思える人は、きっと他にはいないんだろうな。 樺島の傷が癒えるように、痛みを分かちあえるように……そのために少しでも傍にいたい。 微笑む彼に触れるだけのキスをして、そんなことを思ったーー。

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